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次世代Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用

SEO対策やページ表示速度アップに有効!「Angular」のサーバーサイドレンダリング

次世代Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用 第19回

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 本連載では、Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用方法を、サンプルとともに紹介しています。前回は、2018年10月にリリースされたAngular 7の新機能を紹介しました。今回は、サーバー側でAngularのWebページを生成するサーバーサイドレンダリングについて、利点や実装方法、機能制限などを紹介していきます。

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はじめに

 Angularは、Googleとオープンソースコミュニティで開発されているJavaScriptフレームワークです。最初のバージョンはAngularJS(AngularJS 1)と呼ばれていましたが、バージョン2で全面的に刷新され、以降、おおむね半年に1回アップデートされています。

 Angularでは、サーバーからダウンロードされたJavaScriptをWebブラウザー(クライアントサイド)で実行して、Webページを描画します。この仕組みは、動的なWebページを実現するのに有効ですが、以下の問題も抱えています。

検索エンジン最適化(SEO)への対応

 Googleなどの検索エンジンは、「クローラー」と呼ばれるプログラムでインターネット上のWebページを定期的に取得して、検索結果に反映させます。JavaScriptを実行できないクローラーは、動的に描画されるWebページの内容を取得できないため、検索エンジン最適化(Search Engine Optimization, SEO)に支障をきたす可能性があります(Googleのクローラーについては、JavaScriptも解釈できるので問題ありません)。

スペックが低い端末、遅いネットワークへの対応

 クライアントサイドで描画する場合、ページの表示速度は端末の処理速度に依存します。また、JavaScriptファイルがダウンロードされて実行されるまで、Webページが描画されません。そのため、スペックが低い端末や、ネットワーク速度が遅い環境では、ページの表示速度が低下します。

 これらの問題に対応するため、Angularでは、サーバーサイドでWebページを生成する「サーバーサイドレンダリング」を実現する「Angular Universal」が利用できます。この仕組みにより、JavaScriptが実行できない場合や、JavaScriptがダウンロード/実行されるまでの間、サーバーサイドで生成されたWebページを表示できます。

 本記事では、Angular Universalを利用したサーバーサイドレンダリングについて、実装方法をサンプルとともに説明していきます。

対象読者

  • AngularのWebページでSEO対策を行いたい方
  • Webページの表示速度をできるだけ速くしたい方
  • より多くの環境にAngularのWebページを対応させたい方

必要な環境

 Angularの開発ではTypeScript(変換してJavaScriptを生成する、いわゆるAltJS言語)を利用する場合が多く、本記事のサンプルコードもTypeScriptで記述しています。

 今回は以下の環境で動作を確認しています。Webブラウザーは、JavaScriptの有効/無効を設定で切り替えることができるGoogle Chromeを利用します。

  • Windows 10 64bit版 
    • Angular 7.2.4
    • Angular CLI 7.3.1
    • Node.js v10.15.1 64bit版
    • Google Chrome 72.0.3626.96

 サンプルコードを実行する前に、サンプルのフォルダーで「npm install」コマンドを実行してライブラリーをダウンロードしてください。実行方法は後述します。

[補足]ChromeでJavaScriptの有効/無効を切り替える

 ChromeでJavaScriptの有効/無効を切り替える設定は、設定画面の「詳細設定」-「コンテンツの設定」-「JavaScript」にあります。「chrome://settings/content/javascript」のURLを開いて、設定画面を直接表示することもできます。

図1:ChromeでJavaScriptの有効/無効を設定する画面
図1:ChromeでJavaScriptの有効/無効を設定する画面

Angularプロジェクトをサーバーサイドレンダリング対応する方法

 Angularプロジェクトをサーバーサイドレンダリングに対応させる方法を、図2のサンプルで説明します。Angular CLIの「ng new p001-basic」コマンドでプロジェクトを生成後、そのまま「ng serve」コマンドで実行して、Webブラウザーで「localhost:4200」を開くと、図2の通り表示されます。

図2:Angular CLIで生成したプロジェクトの実行結果(p001-basic)
図2:Angular CLIで生成したプロジェクトの実行結果(p001-basic)

 この状態で、WebブラウザーのJavaScriptを無効にしてページを再表示すると、真っ白なページが表示されます。これは、JavaScriptがWebページを描画できないためです。Webページのソースコードでは、JavaScriptが参照されているだけで、ページの内容は何も記述されていません。

図3:図2のWebページのソースコード(p001-basic)
図3:図2のWebページのソースコード(p001-basic)

 このプロジェクトに、サーバーサイドレンダリングを導入していきます。リスト1のコマンドを実行すると、Angular CLIによって、プロジェクトにサーバーサイドレンダリング対応の実装が追加されます。ここで「--clientProject」オプションには、元のWebページのプロジェクト名(ここでは「p001-basic」)を指定します。

[リスト1]プロジェクトにサーバーサイドレンダリングを追加するコマンド
ng add @nguniversal/express-engine --clientProject p001-basic

 プロジェクトをビルドして実行するには、リスト2のコマンドを実行します。(1)がビルド、(2)がWebサーバーを起動するコマンドです。コマンドの詳細は後述します。

[リスト2]プロジェクトをビルド・実行するコマンド
npm run build:ssr #Webページをビルド...(1)
npm run serve:ssr #Webサーバーを起動...(2)

 リスト2のコマンドを実行後、JavaScriptが無効のWebブラウザーで「localhost:4000」を開くと、今度は図2と同じ内容のWebページが表示されます(ポート番号が「ng serve」コマンドでの実行時と異なる点に注意)。Webページのソースコードを参照すると、図4の通り、サーバーサイドで生成されたページの内容が記述されています。

図4:サーバーサイドレンダリング対応Webページのソースコード(p001-basic-ssr)
図4:サーバーサイドレンダリング対応Webページのソースコード(p001-basic-ssr)

 このように、サーバーサイドレンダリングを利用すると、JavaScriptが実行できない場合でもWebページを表示できるようになります。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト  吉川 英一(ヨシカワ エイイチ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/11444 2019/03/18 11:00

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