帳票ベンダ・インタビュー
第2回:日本オプロ株式会社

山田祥寛(http://www.wings.msn.to/
2005/2/11



 企業基幹システムの主体は、メインフレームやクライアント/サーバ型システムからインターネット・ベースのWebシステムへと着実に移行している。確証帳票、申請帳票のような定型帳票から月例レポートのような非定型帳票まで、ありとあらゆる業務帳票の見直しが、いま迫られている。本連載は、オープン化時代の帳票開発という視点から、現状の課題と今後の方向性を、代表的な帳票ベンダへのインタビューを通じて明らかにしていくものだ。

 連載「帳票ベンダインタビュー」第2回の今回は、D3M(Digital Document Distribution & Management)ソリューション「OPRO X Server(以降、OXS)」の開発を行う日本オプロ株式会社(以降、オプロ)の執行役員 松下康之氏に帳票開発の現状と今後の方向性について話を伺った。

  帳票アプリケーションの課題とOXSによるソリューション

日本オプロ 執行役員 ビジネス開発部総括 松下康之氏

 企業基幹システムのオープン化は、帳票開発にどのようなインパクトやニーズをもたらしただろうか。

 本連載第1回「企業基幹系システムの変化から生まれた帳票技術」述べたように、オープン化がシステム開発に与えたインパクトは大きい。しかし、開発者の視点はもっぱら上位のアプリケーションの方に向けられてはいなかっただろうか。実際に帳票開発に与えられたインパクトは、上位アプリケーションに与えられたそれ同様(あるいは以上)であったにもかかわらず、帳票開発は旧態依然と取り残されてしまった感がある。オプロでは、オープン化に伴う帳票化の課題について、以下のポイントから着眼しているという。

  • リアルタイム性
  • 複数環境の並存
  • 帳票の多様化

 以下では、これらのポイントに対するオプロの取り組みを、具体的な製品ラインアップと照らし合わせながら紹介していこう。

 リアルタイム性

 従来のメインフレーム系システムにおいて、帳票とは日次/月次のようなバッチ処理でセンター出力されるものであった。しかし、オープン化は、クライアントがホストに対して直接に印刷指示を行い、手元のプリンタに帳票を出力したいというニーズを新たに呼び起こした。こうした「リアルタイム性」がシステムに与えるインパクトは大きなものだ。

 例えば、とある大手量販店では、棚札ラベル(帳票)の配信システムをアプリケーション・サーバ上に直接に組み込む、いわゆる「アプリケーション組み込み型」のシステム構成を採用していた。従来の構成では、企業内の各拠点から逐次出される出力指示に対して、必然的にミドルウェアに負荷が集中せざるを得なかった。結果として、帳票ミドルウェアの負荷超過がアプリケーションそのものの異常終了までも招くこととなってしまった。

 そこでこの会社が従来の帳票ミドルウェアからの乗り換えとして採用したのが、オプロのOXSであったわけだ。OXSが従来型のミドルウェアやライブラリから構成される製品と大きく異なる点は、独立した帳票「サーバ」という形態である点だ。

 「独立サーバ型」の構成には、負荷分散という意味で、「アプリケーション組み込み型」の構成に比べて優位点がある。

 というのも、従来の「アプリケーション組み込み型」構成では負荷の増加に対応するために、アプリケーション・サーバそのものを多重化する必要があった。しかし、帳票サーバが独立しているならば、アプリケーション・サーバ自体は何ら意識することなく、帳票サーバのみを多重化することができる。これによって、極端な要求負荷の変動にも耐えられるというだけではない。システムを小規模構成でパイロット・スタートしておき、将来的にスパイラル・アップするというようなケースにも容易に対応できるというわけだ。

● 複数環境の並存

 本連載でも繰り返し述べているように、オープン化は多様なミドルウェア、システムの並存を可能にした。このような環境下では、往々にして、それぞれのミドルウェアの単位に複数の帳票ツールが稼働しているという状況が起こり得る。あるいは、帳票のフォーマット単位に異なるツールを利用しているということが起こり得る。このようなツールの混在は、開発者の運用/保守負担をいや増す原因ともなるものだ。

 ここでも、帳票サーバとしてのOXSの利点は生きてくる。というのも、従来型のミドルウェア/ライブラリ型の帳票ツールでは、どうしてもシステムと密に結合せざるを得ない。異なるプラットフォーム、異なるミドルウェアに対して、なかなか1つのツールで賄うことは難しいというわけだ。しかし、独立した帳票サーバであるOXSでは、上位アプリケーションとの疎結合が可能になる。上位アプリケーションからは帳票を作成するために必要なパラメータ(URLクエリ)を引き渡すだけでよいので、それこそレガシー・アプリケーションからWebサービス、データベース・サーバ、はたまた、Notesのようなナレッジベースまで、いかようなアプリケーションとも容易に連携できるというわけだ。

図1 基幹システムのアプリケーションとWebサービスを管理

 そして、OXSにはもう1つ、忘れてはならない重要なポイントがある。それは、帳票管理用の専用ツールであるOXS Pro Management Serviceの存在だ。

 帳票の電子化が進むと、とかくセキュリティ上の問題が取りざたされることが多くなってくる。データを簡単に出力できるということは、半面で、データが漏えいする危険性も高くなるということでもあるからだ。そこで、帳票の出力履歴やユーザー管理が実運用上は必須の機能となるわけであるが、おそらく複数の帳票ツールが分散した環境下では、このような機能を出来合いのツールで賄うことは難しかったのではないだろうか。結果として、多くのシステムで管理機能を自前で構築することを余儀なくされていた。

 しかし、独立した帳票サーバであるOXS ProとManagement Serviceを利用することで、帳票管理をあらかじめ用意された一貫したインターフェイスで行うことができる。帳票作成に利用されたテンプレート名、帳票名、利用ユーザー名などはすべて実行履歴として残すことができるので、利用状況の集計/分析や帳票の再出力なども容易に行うことができる。これは、ほかの帳票ツールでは意外とおざなりにされてきたポイントでもあり、今後、電子帳票の利用が主流となっていく中で、OXSの大きな優位点であるといえるだろう。

● 帳票の多様化

 帳票の電子化に伴い、出力すべき帳票のフォーマット/媒体も多様化した。旧来からのセンター出力は、FAXサーバやメールサーバによる配信、あるいは、オンライン上でのPDFやHTML、画像データによる帳票発行などによって確実に置き換えられつつある。また、1998年7月に施行された「電子帳簿保存法」によって、システム上で扱うことができる帳票の種類それ自体が急速に増加している。おそらく、今後も新たなビジネスの使途、そして、法対応の必要性から、帳票を開発/改訂すべき機会は多くならざるを得ないだろう。

 このような潮流にあって、帳票設計それ自体の効率化が急務であるのはいうまでもない。そこでオプロが提供するのが、帳票設計ツールとしてのOPRO X Designer(以降、OXD)だ。OXDは、連載第1回でも登場したウィングアークの「Super Visual Formade」に相当する製品だ。データソース連携やマッピング、計算式の埋め込みなどがすべてGUIベースで行えるため、帳票を実際に使用するエンドユーザーが手ずから帳票設計を行えるのが特徴だ。加えて、OXDではチャートやバーコード作成の機能が強いという特性がある。

画面1 OPRO X Designerによる帳票設計の例

 いまや帳票とは、いわゆる対外的な取引帳票や法対応上必要な確証帳票ばかりを指すものではない。社内的なビジネス・レポートからカタログ、ちらしなどを電子ベースで取り扱うケースは確実に増えている。このような帳票のことをクラシカルな「定型帳票」とは区別する意味で「非定型帳票」と呼んでいる。こうした非定型帳票では、とかく顧客、上司に〈訴える〉というその性質上、定型帳票以上に使途に沿った美観やビジュアル性が重視される。

画面2 OPRO X Browserによる帳票設計の例(画面をクリックすると拡大表示します)

 しかし、従来の帳票ツールでは、こうしたグラフィカルな表現力が十分でないケースが多かった。この点、OXDでは棒グラフや円グラフなどの基本チャートはもちろん、積層グラフ、エリアグラフ、ローソクグラフ、散布図など多くのチャート形式にも対応している。表現のバリエーションという意味では定型帳票以上に多彩な非定型帳票を、OXDならば、あまねくサポートすることができる。

今後の課題〜疎結合と密結合への両立へ〜

 以上、オプロによる帳票開発の取り組みを一言で表すならば、「疎結合」といえるだろう。昨今のビジネス変動、システムに掛かる負荷の増減幅、そして、多様化する帳票へのニーズ……そのいずれの要因をかんがみても、帳票アプリケーションを上位アプリケーションから明確に切り離すことは今後の最低条件でもあるのだ。

 しかし、松下氏はこうも語る。「今後はSAPやOracleなどのERP製品との連携を強化していく予定です。もちろん、OXSは上位アプリケーションと疎の関係にありますから、いまでも連携は可能です。しかし、主要な製品との連携ノウハウを高めることで、システム全体の開発負荷を軽減していくことは重要な課題だと考えています」

 独立した帳票サーバOXSの疎な柔軟性と、周辺ソフトウェアとの密な連携とが、今後、どのようなソリューションを生み出していくのか、今後も同社から目が離せない。





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