帳票ベンダ・インタビュー
第4回:キヤノン販売株式会社

山田祥寛(http://www.wings.msn.to/
2005/5/26



  多彩な出力形式の帳票、キヤノン販売

 オープン化時代の帳票開発という視点から代表的な帳票ソリューション・ベンダに話を聞く本連載も、早いもので第4回。今回は、帳票設計/生成ツールである「imageWARE Form Manager」を中核に、帳票出力/管理からシステム連携、出力デバイス制御まで総合的な帳票ソリュ―ションを提供するキヤノン販売株式会社(以降、キヤノン販売)に伺った。インタビューに応じていただいたのは、同社ソリューションビジネス推進部チーフ小穴隆三氏だ。

帳票出力/管理からプリンタ制御まで オールラウンドな出力ソリューション

 キヤノン販売における帳票ソリューションの中核を占めるのが、「imageWARE Form Manager(以下、Form Manager)」だ。Form Managerは、帳票設計から上位システムとの連携、出力デバイス制御までを総合的に担う帳票統合環境だ。以下の図を見ても、すべての帳票ミドルウェアがForm Managerを中心に密な連携を取っているのがお分かりいただけると思う。

図1 キヤノン帳票ソリューションの概念図

 以下では、これらキヤノンの統合帳票環境の中から「出力方式」「帳票設計」「上位システム連携」という3点にフォーカスして、主要な製品体系を紹介していこう。

多彩な出力環境をサポートする「マルチプリント・アーキテクチャ」

 オープン化は、帳票の出力形態の多様化をもたらした。従来のメインフレーム系システムにおいて、帳票とはセンターで日次/月次バッチ処理で出力されるものであった。しかし、オープン化は、クライアントがホストへ直接出力要求を行い、リアルタイムに帳票を取得したいというニーズを呼び起こした。もちろん、その中には1枚1枚、帳票の内容を確認したいもの、大量の帳票をダイレクトに印刷したいもの、はたまた、データのみをプールしておいて従来のように日次バッチで出力したいものと、さまざまなニーズが含まれる。このような多様なニーズに応えるために、Form Managerでは3つの出力方式を提供している。

方式 概要
SSM(サーバサイド方式) サーバ側でPDFデータを生成する方式
CSM(クライアントサイド方式) フォーム・テンプレートと帳票データのみを送信し、フォーム生成はクライアント側で行う方式
FCM(出力フォルダ方式) 専用フォルダに帳票を格納し、大量印刷を可能とする方式
表1 Form Managerが提供する3つの出力方式

 汎用的なPDF配信方式(Server Side Making方式)のほかに、CSM、FCMといった独自方式に対応している点に注目だ。

 CSM(Client Side Making)方式は、サーバ側で帳票を生成するのではなく、クライアント側にフォーム・テンプレートと帳票生成のための元データのみを配信し、帳票自体はクライアントサイドで生成する仕組み。クライアント・マシンに専用のアプリケーションをインストールしていく必要はあるが、帳票サーバやネットワーク・スペックに制限がある環境では、クライアントの資源を効率的に利用できるという利点がある。クライアント・アプリケーションでは、フォーム・テンプレートのキャッシュ機能も付いているから、繰り返し同一のフォームを生成したいと思った場合にも、同じテンプレートを毎回ダウンロードする必要はない。

キヤノン販売 ソリューションビジネス推進部チーフ 小穴隆三氏

 FCM方式は、サーバ側で生成した帳票データをいったん「特定のフォルダ」に格納する方式だ。帳票がフォルダ上にプールされるため、大量帳票を一括でバッチ出力する用途に向いている。また、Fax/Mailプラグインを利用することで電子メールやFAXに配信したり、異常終了時の再印刷指示を行ったりできるなど、高度な業務要件にも耐えられるのが特長だ。

 Canonプリンタと連動することで、ステープル印刷や印刷ジョブ監視など決め細やかな印刷制御にも対応できる点は、プリンタ・メーカーならではのソリューションといえるだろう。

小穴氏はそのメリットを次のように強調する。「他社プリンタももちろん利用できますが、キヤノン製プリンタと連動することで、よりきめ細やかな帳票制御が可能になります。ハードウェアからソフトウェアまでを統合して提供する弊社のソリューションは、競合ベンダと差別化できるポイントの1つだと思います」

 また、厳密には出力方式とは異なるが、出力の一形態をサポートするツールとして、ポータル&BIツール「ReportSurfer」にも言及しておきたい。ReportSurferは、もっぱらエンドユーザーをターゲットとしたレポーティング・システムだ。

 帳票と一口にいっても、昨今では対外的な確証などを目的とした「定型帳票」だけではない。エンドユーザーが社内的な業務/経営分析のために用いる「非定型帳票」(=レポート)も多くなってきた。従来であれば、このような非定型帳票を作成するにも、システム運用部門の手を煩わせなければならなかった。ユーザー部門から伝えられた抽出条件を基にシステム運用部門ではデータの出力を行い、ユーザー部門ではそのデータをExcelなどで整形するという、お決まりの流れだ。これは情報のリアルタイム性を損なうというのみならず、システム運用部門にとっては少なからぬ重荷であったはずだ。しかし、ReportSurferを利用することで、エンドユーザーが直接にデータベース・サーバにアクセスし、データを抽出することができる。

画面1 Report Surferによる帳票出力イメージ<画面標識の指定>
画面2 ReportSurferによる帳票出力イメージ<検索結果の表示>

 ブラウザから抽出条件やソートキーなどを自由に変更できる手軽さもさることながら、出力形式としてCSV/PDFの帳票出力、いずれかの形式を選択できるので、分析/報告など用途に合わせて幅広く活用できる点にも注目したい。

表現力と保守性を保証する高機能な帳票設計エディタ

 帳票システムの構築に当たって、<変化に強い>帳票基盤を用意することは重要だ。

 昨今、ビジネス変動はますます加速度を増し、組織改定や法改正などシステムの外的な変動要因を数え上げればきりがない。また、帳票の場合、電子化によって出力媒体が多様化したという事情もある。従来の紙出力はもちろん、HTML、PDF、画像などさまざまな形式で出力可能な帳票が求められている。旧来のように、1枚1枚の帳票をプログラミングによって開発していく手法が、開発生産性/保守性いずれの観点から見ても、すでに限界に来ていることは明らかだ。

 そんな今日の帳票開発では、レイアウトやデータ・マッピングを定義したテンプレートは「フォーム・ファイル」として外部化し、最終的な帳票出力時にデータ・バインドする手法が一般的となりつつある。そして、この流れはForm Managerの場合も例外ではない。専用の帳票設計ツールである「フォーム・エディタ」が提供されており、プログラミングに精通していない人間でも簡単にフォーム・ファイルを定義できるようになっている。フィールドデータ・エディタを利用すれば、データソースからプログラムレスで必要な情報を抽出し、帳票データとして活用することも可能だ。

画面3 フォーム・エディタによる帳票レイアウトの設計 フィールドエディタで、データベースから帳票に必要なデータソースをプログラムレスで抽出し、帳票データとして活用することができる

 フォーム・エディタには、ドラッグ&ドロップベースのレイアウト・デザイン機能やデータ・マッピング機能、Excel/Wordや画像形式からのレイアウト・インポート機能など、帳票設計ツールとして必要な一通りの機能が備わっているが、それだけではない。ここで注目していただきたいのは、単票から複合帳票、可変帳票までさまざまな帳票レイアウトに対応することで、フォーム・ファイルの保守性を最大限に高めているという点だ。

画面4 フォーム・エディタが対応する一連の帳票タイプ

 例えば、複合帳票機能を利用することで、レイアウト部品をフラグメントとして管理し、出力時には動的に組み合わせることが可能になる。帳票には、会社ロゴやヘッダ部分など、複数帳票で共有可能なレイアウトが多く存在するが、複合帳票機能を利用することで、こうしたレイアウト部品を一元的に管理できるのがうれしい。

 なお、フォーム・エディタで作成された帳票サンプルは、同社が公開する「Canon Form Manager体験サイト(http://iwfm.jp/ASP/)」で参照できるので、興味のある方は一度のぞいてみるとよいだろう。

大規模システム構築を支えるシステム連携&負荷分散ソリューション

 本連載でも繰り返し述べてきたように、オープン化はさまざまな異種ミドルウェアの並存を可能にした。あるいは、オープン環境では、異種環境の並存は宿命といってもよいかもしれない。このような環境では、往々にして、ミドルウェアの単位に異なる帳票アプリケーションが稼働しているという状態が発生し、システム管理者の負担をいや増す原因ともなっていた。

 しかし、Form Managerには、メインフレーム系システムとの連携を支援するCCPrint、Oracle E-Business Suiteや、SAP R/3のようなERPパッケージとの連携を可能にするFMConcurrent/CSGなどのミドルウェアが用意されており、異種ミドルウェア混在環境をForm Managerで一元管理することが可能だ。レガシー・マイグレーションから最新のERP導入まで上位システムへの影響を最小限に、帳票システムを構築できるのが、キヤノン帳票ソリューションの強みでもある。

 また、大規模システムの構築には必須ともいえる負荷分散機能にもきちんと対応している点にも注目したい。以下の図は、imageWAREによる負荷分散の概念を表したものだ。

図2 オーバレイ処理の負荷分散機能
Form Manager Agent/Manager/Composerによる負荷分散イメージ 
1. アプリケーションからの要求は FMAgent を経由して FMManager/FMComposerへ送信
2. FMManagerは、FMAgent からの印刷要求に対して適切なFMComposer を割り当てる

 ユーザー・アプリケーションからのリクエストはAgentを経由して、Managerに送信される。Managerは要求の制御や分散を行うためのソフトウェアで、Composerの状態に応じてリクエストを振り分けるというわけだ。Composerはフォーム・ファイルのオーバレイ処理を行うためのソフトウェアだ。

 Agent/Manager/Composerはそれぞれ異なるサーバに分散して配置することができるから、システム規模に応じて、それぞれのソフトウェアを追加配置することで、規模の伸縮にも最小限のコストで柔軟に対応できる。


 以上、キヤノン販売における帳票開発の取り組みを「出力方式」「帳票設計」「上位システム連携」といった観点から俯瞰してきた。オープン化時代における帳票ソリューションがもはや帳票単独では語れないことがお分かりいただけることと思う。上位アプリケーションとの密な連携と、環境変動に耐えられる疎な連携と――その両立がいま、求められている。





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