進歩の速いWeb関連技術。次から次へと新しい概念や技術が登場するので,なかなかフォローしきれないと考えている人も多いでしょう。そこで,この春からWebを担当するという人に向けて,とりあえずこれだけは押さえておきたい三つのトレンドについて,これまでに当サイトに掲載した解説記事を紹介します。すでにWebを担当している人も,復習を兼ねて読んでみてください。

その1:Web標準

(筆者:益子 貴寛)

 Web業界では「Web標準(Web Standards)」を意識した正しい(X)HTML+CSSに基づくサイト制作が当たり前になってきている。Webのポテンシャルを最大限に活かすためのWeb標準について,基礎知識だけでなくトレンド的な観点を交えながら,「なぜWeb標準が普及してきているのか」を考えてみよう。

 Web標準(Web Standards)とは,「Webで標準的に利用される技術の総称」である。では,何をもって「標準的」とするのだろうか。今日の一般的な理解では「国際的な標準化団体が取りまとめている」ということであるが,その最も代表的な団体がW3C(World Wide Web Consortium)である。ほかにもISOやIETF,IANA,ECMA,OASISなどもWeb技術の標準化に大きく関わっているが,W3Cが中心的な役割を果たしているといってよい。

 最近では,Web標準を意識した正しい(X)HTML+CSSに基づくサイト制作が一般的になりつつある。アクセシビリティやSEO(検索エンジン対策),メンテナンス性,互換性,相互運用性など,Webのポテンシャルを最大限に活かそうとすると,結局「Web標準」に行き着くことに気づいている人が増えているからだ。

 これまでテーブル(表)を使ってレイアウトすることが多かったWebであるが,CSSレイアウトを全面導入し,テーブルを使わずにレイアウトする(「脱テーブル」する,「フルCSS」にする)サイトが増えてきている。特に,大企業サイトや都道府県サイトなど,様々なユーザーが集まる公共性の高いサイトでは,脱テーブル化,フルCSS化が一つのトレンドとなっている。

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その2:Ajax

(筆者:山田 祥寛)

 Ajaxについてくどくどとしくみの紹介を先行するよりも,まずはAjax技術を利用して構築したアプリケーションの例をご覧戴いたほうがわかりやすいかもしれません。下の図は,Ajax技術を使った例として取り上げられることの多い地図アプリケーションGoogleマップの画面例です(クリックすると別ウィンドウでサイトを表示します)。

 ブラウザ上のマウスドラッグによって地図の表示範囲を移動させたり,拡大/縮小率を変更したりできます。従来であれば,地図上の表示や縮小率を切り替えるたびに,いちいち画面(ページ)を切り替えなければならなかった手間や,そのために自分が一番見やすい位置,縮小率に合わせるのが難しかったことを思えば,はるかに直感的な操作性を提供していることがおわかりになるでしょう。

 このような,一見,Flash技術を利用しなければ実現できそうもないリッチなコンテンツを,(特別なプラグインなどを導入することなく)標準的なブラウザの機能だけで実現できてしまうあたりが,Ajax技術が急速に注目を浴びたゆえんともいえます。昨今では,Ajax技術を利用したアプリケーション(コンテンツ)が,それこそ雨後の筍のように登場しています。

 さて,Googleマップのような例を見てみると,いかにも革新的な技術のようにも思えるかもしれません。しかし,繰り返しになりますが,Ajax技術がこれだけ注目を浴びたのは,こうしたリッチな効果を,ブラウザ標準の技術だけで実現できるという点にあります。Ajaxとは決して新しい技術ではないのです。

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その3:WebサービスAPI

(筆者:川崎 有亮)

 Web 2.0の要素として,「マッシュアップ(mash up)」という言葉がよく聞かれるようになりました。マッシュアップとは,複数のWebサービスを融合して,新しいサービスとして提供する形態を指します。コンテンツ・ホルダーがWebサービスとして自社データの提供を拡大してくる中で,マッシュアップによって新たな価値を生み出す場が広がってきました。

 例えば,この1年で,スクロール地図を利用したサイトがとても増えてきました。不動産業者の物件地図,飲食店の情報マップ,写真と合わせたクチコミサイトなど,いたるところで地図を見かけるようになりました。

 ほんの数年前まではWeb上の地図データは,高額な利用料が発生したり,自前で地図画像を作成するのも手間なので,なかなか手を出しにくい分野でした。現在はGoogle Mapsなどの無料のWebサービスが提供されているため,プログラミング力があれば手軽に自サイトに地図を導入できるようになりました。しかも,日本中~世界中の地図をスクロールや拡大縮小して見られますし,衛星写真にも切り替えられる便利な地図機能です。

 Googleは,自社以外のサイトでもGoogle Mapsの地図機能を利用できるように,Google Maps APIというWebサービスAPIを無償で公開しています。“API”とはApplication Program Interfaceの略で,機能を呼び出す手順の決まりごとのようなものです。Google Maps APIでは,地図機能をGoogle以外のサイトからも利用できるインタフェースが提供されています。

 Google以外にも,Amazonの商品情報やTechnoratiのブログ検索など,各社が自社データをWebサービスAPI経由で提供しています。海外だけでなく日本国内でも,はてなの「はてなウェブサービス」をはじめ,livedoorの天気情報,価格.comの商品検索など多くのWebサービスが登場してきました。これらのWebサービスで提供されるデータを活用することで,自分のアイディアを活かした新しいマッシュアップ・サイトを構築していくことができます。

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