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Webアプリケーションフレームワーク「Catalyst」入門

初めてのCatalyst入門(6)
Perlのオブジェクト指向とモデル

blessとMooseの違い、Catalystのモデルについて解説


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 本連載では、Perlで実装されたWebアプリケーションフレームワークであるCatalystについて、基本的な仕組みや実装方法などをサンプルを交えて紹介していきます。第6回目の今回は、blessとMooseを比較したPerlのオブジェクト指向プログラミングについて説明し、その後にモデルの概要を説明していきます。

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はじめに

 前回では、フロー制御のメソッドを使用してアクションからURLを遷移することなく別アクションを呼び出す方法、そしてリダイレクトを行う方法を紹介しました。これでコントローラに関する主要な機能についての紹介を終えて、今回からはモデルに移っていきたいと思います。

 ところで、Catalystの5.7から5.8にバージョンアップされた際に、内部を実装する仕組みとしてMooseが採用されました。MooseとはPerl5にオブジェクトシステムを導入するためのモジュールであり、これまでのblessを使用したPerlのオブジェクト指向プログラミングよりも簡単に、より多くのことを実現できます。

 本記事では、簡単にではありますがblessMooseを比較したPerlのオブジェクト指向プログラミングについて説明し、その後でモデルの概要を説明していきます。

対象読者

  • Perlで簡単なスクリプトを作成したことのある方
  • Perlのオブジェクト指向プログラミングについて初歩的な知識のある方
  • Webアプリケーションの基本的な仕組み(HTTPリクエスト、レスポンスなど)についての知識のある方

これまでの連載

必要な環境

 本連載で紹介するサンプルなどで実行している環境は次の通りです。

CentOS 5.3
  • Perl 5.8.9
  • Catalyst 5.80013

 また、動作確認を行ったWindowsの環境は次の通りです。

Windows Vista
  • ActivePerl 5.8.9 Build 826
  • Catalyst 5.80011

Perlのオブジェクト指向プログラミング

 Perl5までは、C++やJavaのようなオブジェクトという概念は言語仕様には含まれておらず、言語の互換性を保ったまま実現するために、後付として独特な仕組みが実装されました。

 この独特な仕組みでオブジェクトを作成するためにはbless関数を使用します。Perlのオブジェクトはリファレンスであり、packageで指定される名前空間とリファレンスを結びつけるのがblessになります。オブジェクトはリファレンスであるので、プロパティやメソッドには->演算子を使用してアクセスします。

 Fooオブジェクトを生成し、barメソッドを呼び出す場合には次のように記述します。オブジェクトの生成を行うメソッド名(コンストラクタ)にはどのような名前を使用してもかまいませんが、newという名前が慣例として使われています。

[リスト1]Perlのオブジェクト生成、呼び出し例
# Fooオブジェクトの生成
my $foo = Foo->new();
# barメソッドの呼び出し
$foo->bar();

 blessでは、名前空間とリファレンスとの関連づけを行うところまでしか面倒を見てくれないため、コンストラクタやプロパティへのアクセスメソッド、さらに読み取り専用などのアクセス権限までも含めてプログラマがいちいち記述する必要があります。これらの処理はほとんど同じ形式のため、オブジェクトが増えればそれだけ、似たようなメソッドを延々と書き続けることになります。

 このような、同じことの繰り返しを避けるために、Perlではモジュールという形でさまざまなクラスの定義手法が提案されてきました。

 CPANには、Class::で始まるさまざまなクラス定義モジュールが登録されており、それぞれに特徴を持った機能を用意しています。これらの試みのなかから、メタオブジェクトプロトコル(Meta Object Protocol:MOP)を利用したMooseが登場しました。Mooseを使用することで、オブジェクト指向プログラミングをする上での煩雑な手続きを、より簡単に行うことができるようになります。

 以降では、Personクラスとそれを継承したBaseballPlayerクラスを例として、blessMooseでどのようにクラスを定義するかを紹介します。Personにはnameageの2つのプロパティを持ち、ageは書き込み不可とします。BaseballPlayerにはteamプロパティを追加し、それぞれのクラスには自己紹介を行うintroduceメソッドを定義します。

【コラム】メタオブジェクトプロトコル

 メタオブジェクトプロトコルとは、オブジェクトシステムに対する操作を行うためのAPIで、派生関係などのクラス情報を取得したり(イントロスペクション)、クラスやオブジェクトの振る舞いを変更する(インターセッション)APIを持ちます。

 Perl5のオブジェクトシステムに対するMOPのライブラリとしては、Class::MOPが有名で、MooseもこのClass::MOPに対するラッパとして実装されています。

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 花田 善仁(ハナダ ヨシヒト)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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