Project 2003 製品情報


写真1■プラネット株式会社代表取締役 中嶋秀隆氏


図1■成功するプロジェクト(出典:PMBOK第3版)


図2■失敗するプロジェクト。PONR(Point Of No Return)は後戻りできないポイントを示している


図3■プロジェクト・マネジメントを構成する3大要素

Excelではプロジェクトは管理できない−プロジェクト成功のための必須ツール「Microsoft Project 2003」−

 「為せば成る」
 「最後は徹夜してでも終わらせます」

 かつてのプロジェクトで頻繁に聞かれた精神論はもはや過去のものだ。プロジェクトを成功させるのは奔放な精神論でも十人十色の職人芸でもなく、確立されたプロジェクト管理手法の導入であるにほかならない。

 ここ数年、国内でもプロジェクト・マネジメントの重要性が喧伝された結果、プロジェクト・マネジメントの意識は急速に浸透を遂げている。千葉工業大学や北海道大学を始めとして、現在ではプロジェクト・マネジメントを専門とする学科が開始されるなど、教育の場にも確実にプロジェクト・マネジメント普及の素地は広がりつつある。

 もっとも、一方で「火を噴くプロジェクト」が依然として多いのも事実だ。身近な実感として、プロジェクト終盤の徹夜作業も到底解消したとは思えない。プロジェクト・マネジメントの重要性は理解したものの、それをどのように現場のプロジェクトに導入していくのかについては、まだまだ暗中模索であるというのが、現在の状況なのだろう。

 そこで本企画の前編となる今回では、日本およびアジア地域を中心にプロジェクト・マネジメント技法のコンサルティングを行うプラネット株式会社代表取締役 中嶋秀隆氏(写真1)にプロジェクト・マネジメントについて話を伺った。

 プロジェクトを成功させるために不可欠なプロジェクト・マネジメントの方法論とツールとは何か?

プロジェクト・マネジメントとは何か

 そもそも「プロジェクトがうまくいかない」とはどういうことか。中嶋氏は語る。

「プロジェクトが成功する場合、目標の明確化、計画の立案、実行/管理、まとめという4つの段階をたどります。そして、これら4つの段階と作業量の関係をグラフ化してみると、なだらかな山型の曲線を描くのが一般的です(図1)。しかし、失敗するプロジェクトでは、いくつかの山と谷が現れるのが特徴です。そして、残念ながら、日本で行われているプロジェクトの大半がこのパターンに該当します(図2)」

 失敗するプロジェクトは、目標が決まらないままなんとなく開始される。取りあえずやれるところからやってみようというわけだ。しかし、そのように始まったプロジェクトの多くは、「本当にこのやり方でよいのか」「これはわれわれの要望ではない」といった、参加メンバーからの疑問の声や上層部の「ツルの一声」でストップしてしまう。

 そしてあれこれ手戻りのための工数を費やしているうちに、納期から逆算した「後戻りできないポイント(PONR:Point Of No Return)」に到達してしまい、あとは無理を承知でリソースをかき集め、コストを垂れ流しながら、納期まで滑り込む――とまあ、よくありがちな「火を噴くプロジェクト」が展開されることになる。

 これまでは、このようなやり方でも何とかプロジェクトは一定の「成功」を収めてきた。というのも、「高度成長期の日本においては、個々のプロジェクトの採算を厳密に問わなくても、大きな成功でいくつかの失敗を相殺することができた」(中嶋氏)からだ。

 しかし、昨今の日本経済がいわゆる停滞期・低成長期にあることを考えれば、これまでのドンブリ勘定がもはや企業や組織にとって命取りになることは明らかだ。個々のプロジェクトにおいて、厳密に採算を見極めることが必要になってくる。

 そこで登場するのが、プロジェクト・マネジメントだ。

「プロジェクト・マネジメントには大きく3つの要素があります。いわゆる(1)時間、(2)資源(ヒト・モノ・カネ)、(3)スコープ・品質です。プロジェクト・マネジメントでは、これら3つの要素をバランスよく管理していくことが重要です」と中嶋氏は語る。

 例えば、以下のようなケースはよくある話だろう。

 「納期には間に合ったが、プロジェクトの末期は人海戦術に徹夜は当たり前」
 「スケジュールは遵守したが、当初のスペックを削らざるを得なかった」
 「要件はすべて満たしたが、結局、リリースは半年遅れてしまった」

 しかし、これらのプロジェクトは成功したとはいえない。プロジェクト・マネジメントとは、時間、資源、品質の3つの要素をバランスよく満たすことであり、3つの要素のいずれが欠けても企業としては利益とはならないのである。

 「これらの要素を見据え、バランスよく満たすことは<企業経営>そのものにほかなりません」と中嶋氏は語った。近年プロジェクト・マネージャー出身の経営者が増加しているのも、「経営」のスキルを若い頃から身につける事が出来るからであろう。Projectスキルは、キャリアアップを目指すエンジニアにとって必須のスキルと言える。

プロジェクト成功の秘訣は「プロジェクトの見える化」

 では、これらの要素をバランスよく満たすためには、具体的に何が必要なのだろう。それは、プロジェクトそのものの目標にほかならない。

 「プロジェクトが失敗するのは、プロジェクトの軸が見えていないからです。プロジェクトを成功させる秘訣は、プロジェクトの目標を明確に定めることです」と中嶋氏。

 例えば、最近ではドライブに出かける場合にはカーナビを使用することが多い。カーナビを利用することで、目的地とそこへ至るまでのルートが明らかになり、乗車している全員が安心してドライブを楽しむことができる。のみならず、ルートから外れてしまった場合にも、もともとルートがはっきりしているからズレの度合いも、どこへ戻ればよいのかも判断できるというわけだ。

 ドライブを「プロジェクト」に、カーナビが示す目的地とルートを「目標」と「計画」に置き換えてやれば、プロジェクト・マネジメントでもまったく同じことがいえる。プロジェクトの目標を明確にし、実現するための計画をみなが見える状態にしておくことは、プロジェクト成功の第一歩なのだ。

「私たちは、目標の<見える化>を実現する手法として、いわゆるSMART(スマート)基準に目標の文書化を含めた『Do-SMART(ど・スマート)の原則』を提唱しています」(中嶋氏)

 Do-SMART(ど・スマート)とは、

  • Documentation(文書化する)
  • Specific(具体的)
  • Measurable(測定可能な数値として表す)
  • Action Oriented(アクションを明確にする)
  • Realistic(現実的)
  • Time(納期を明確にする)

の頭文字をとったものだ。

 このDo-SMART(ど・スマート)に則って目標を<見える化>しておくことが、プロジェクトが現在どのような状態にあるのか、プロジェクト・マネジメントの三角形が正しくバランスを保っているのかを把握する前提となる。そしてプロジェクトの状態を把握しておけば、プロジェクト開始当初には想定していなかったリスクに対しても、迅速な対応が可能になる。

Excelを使用したプロジェクト・マネジメントは成功するか

 さて、プロジェクトの<見える化>を行おうといった場合、まずはExcelやWordなどを考えるかもしれない。なるほど、Excel/WordはいずれもよくできたOffice製品であるし、そもそも多くの人間が使い慣れた標準のツールだ。手軽に自由な線表やチャートを作成することができる。互いに連携すれば、報告書を作成するのも簡単に行える。

 しかし、Excel/Wordによるプロジェクト・マネジメントで、以下のような問題に遭遇したことはないだろうか。

  • プロジェクトの進行につれて、計画と実績の著しい乖離(かいり)が発生した
  • スケジュール表からは見えないアクション・アイテムが多数発生した
  • 特定メンバーに対して負荷が集中した

 Excelを使うことで一見、手軽に目標とスケジュールとが<見える化>されたように思えるかもしれない。しかし、その手軽さが実は致命的な落とし穴となる。

 Excelによるスケジューリングは往々にして、プロジェクト・マネージャーの恣意的な(あるいは希望的な)観測が含まれるものだ。あらかじめ設定された納期を前提に、いわゆる「逆線表」を引いてしまうという方も多いのではないだろうか。「最初から納期が前提になっているのでは、三角形の3つの要素をバランスよく満たすという発想が欠けている。いわば思考停止状態だ。これでは計画と実績との乖離が発生するのは当たり前」(中嶋氏)だ。

Microsoft Projectは何を解決するのか


画面1■Microsoft Project 2003によって作成されたクリティカルパス。プロジェクト内のクリティカルパスがProjectでは赤い線で強調表示される。

 ここで登場するのが、Microsoft Office Project 2003(以降、Project)だ。Projectでは、納期前提ではなく、ヒトやカネなどのリソース、そして、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解図)により実作業ベースまで細分化されたアクション・アイテムなどの情報を入力することで、動的にスケジュール(ガントチャート)を作成することができる。Excelベースでなんとなく作成した線表が、Projectを利用することで何倍にも伸びてしまったというのはよくある話だ。

「Projectが最も有効であるのは、ガントチャートによって『クリティカルパス』を可視化できるという点です(画面1)。プロジェクト・マネジメントにおいて重要なことは、プロジェクトの遅延に直結するクリティカルパスを認識することです。極端な話、プロジェクト・マネジメントはクリティカルパスの進捗さえ気を付けていればよいのであって、そのほかの進捗は意識しなくてもかまいません。これを『例外管理』といいます」(中嶋氏)

 Projectを利用することで、こうした例外管理を<見える化>し、クリティカルパスに応じた人員配置が容易になる。そして人員に対して平準的にアクションを割り当てることで、プロジェクトのボトルネックを未然に解消できるというわけだ。これは、Excel/Wordでは実現できない機能だ。

 もちろん、プロジェクト進行においては「想定外」の事件も付きものだ。どんなに緻密な計画を立てていても、遅延が発生することはあるだろう。しかし、そのような場合にも、Projectはヒト・カネ・モノなどの変数値を投入することで、動的にスケジュールへの影響を反映させることができる。プロジェクトの進行に伴い、発生する変動要素をいち早く<見える化>し、シミュレーション(What-if分析)することで、リスクにも迅速な対応が可能となる。これもまた、ただの「お絵かきソフト」として使うExcel/Wordでは実現できない機能だろう。

 もっとも、「Projectがそもそも難しいのではないか」と心配される向きもあるかもしれない。しかし心配することなかれ。ProjectはExcelやWordのようなOffice製品とのインポート/エクスポート機能を提供しているため、ExcelやWordと相互にデータを連携することも可能だ。そもそもProject自体がExcel/Wordと統一されたユーザー・インターフェイスを提供しているので、Excel/Wordを使ったことのあるユーザーならば比較的容易に習得することができるだろう。導入時の敷居の低さは、ほかのプロジェクト・マネジメント製品に対するProjectの大きなアドバンテージの1つだ。

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 以上、本稿ではプロジェクト・マネジメントの問題点と勘所、そして、理想的なプロジェクト・マネジメントを実現するための有効な選択肢として「Microsoft Project 2003」を紹介した。これまでプロジェクト・マネジメントといっても、ExcelやWordに頼りきりだったマネージャ諸氏は、これを機会にProjectの導入を検討してみてはいかがだろうか。Projectによる分析やシミュレーション機能を使いこなすことは、上級SE、上級プロジェクト・マネージャーとしての欠かせないステップでもあるはずだ。次回後編では、今回では紹介しきれなかったProjectの主要な機能についてピックアップしつつ、紹介していく予定だ。

[山田 祥寛,ITmedia]

提供:マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア 営業局/制作:ITmediaエンタープライズ 編集部/掲載内容有効期限:2006年6月30日