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軽量PHPフレームワークSlimを習得しよう

エラー処理をSlimに任せるエラーハンドラを使ってみよう

軽量PHPフレームワークSlimを習得しよう 第9回

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 本連載では軽量PHPフレームワークであるSlimを紹介していきます。フレームワークと言えば、重厚長大なもの、いわゆるフルスタックフレームワークが多い中で、あえて軽量フレームワークを取り上げます。軽量ゆえのメリットを味わっていただこうと思います。前回は、リクエスト処理の前後に処理を挿入できるミドルウェアを紹介しました。今回は、いよいよ最終回です。アプリケーション内で発生したエラー処理を、Slimに任せるエラーハンドラを紹介します。

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Slimでエラーを扱えるようになるエラーハンドラ

 マイクロフレームワークであるSlimを紹介するこの連載も、いよいよ最終回です。最終回のテーマは、エラーハンドラです。そのエラーハンドラとは何かから話を始めていきましょう。

エラーが発生した時の画面

 まず、図1を見てください。

図1: /no6/helloNatsumeでエラーを発生させた画面
図1: /no6/helloNatsumeでエラーを発生させた画面

 これは、第6回で紹介したサンプルのうち、以下のURLでの処理中にコーディングミスを行って、エラーを発生させている画面です。

  • http://localhost/firstslim/src/public/no6/helloNatsume

 具体的には、リスト5のhelloNatsume()メソッド中のコンテナからTwigインスタンスを取得しているコードにおいて、以下のようにインスタンス名に間違った記述を行っています。

$view = $this->container->get("vie");

 これは、もちろん間違ったコードなので、エラーとなります。その画面が図1です。見て分かるように、図1というのは、PHPのエラー内容がそのままブラウザ上に表示された画面です。ただし、これはXAMPPを前提とした画面であり、php.iniの設定によっては図1の画面すら表示されず、単に500番エラーがブラウザに表示されてしまう実行環境もあります。いずれにせよ、この状態は、アプリケーション内で発生したエラーに対して、Slimは何も関与していないことを表します。

Slimにエラーを処理させる

 このように、PHPエラーや例外に対してSlimが関与しない状態ではなく、Slimに含まれているエラーハンドラ機能を利用することで、エラー処理をSlimに任せることもできます。そのように設定した場合(設定方法は後述します)、図1と同じエラーが発生した時の画面は、図2のように変わります。

図2: Slimのエラーハンドラを設定した場合のエラー画面
図2: Slimのエラーハンドラを設定した場合のエラー画面

 Trace部分に表示されている内容は、図1の内容と同じですが、全体としてよりみやすいものとなっています。さらに、エラーハンドラ設定を変更することで、同じエラーでも図3のような画面を表示させられます。

図3: 詳細を表示させないように設定した場合のエラー画面
図3: 詳細を表示させないように設定した場合のエラー画面

 図2ではエラー内容が表示されるため、コーディング中は便利ですが、本運用環境には不向きです。むしろ、図3の方が本運用環境には向いています。こういった切り替えも簡単に可能であり、さらに本運用環境用のエラー画面にカスタマイズすることも可能です。

 これが、Slimのエラーハンドラの概要であり、本運用を前提としたアプリケーションでは、エラーハンドラの利用は必須と言えます。

Slimのエラーハンドラはエラーミドルウェア

 概論はここまでにして、実際にエラーハンドラの設定方法を紹介していきましょう。

Slimのバージョン4からはミドルウェアとして設定

 図3の画面は、実はこの連載において初出ではありません。第6回の図1で登場しています。つまり、第6回の段階ではエラーハンドラが設定されていることになりますが、そのような設定をした覚えはありません。

 種明かしをすると、これはSlimのバージョンが違うためです。第6回を執筆した時点ではSlimのバージョンは3系列でした。一方、第7回で紹介したように、現在Slimのバージョンは4系列です。

 Slimがバージョン3から4にアップデートされた時点で、変更になった内容の1つがこのエラーハンドラです。バージョン3では、エラーハンドラはSlimのコアな処理内容に含まれており、デフォルトでエラーハンドラが実行されるようになっていました。

 一方、バージョン4では、このエラーハンドラをコア機能から切り離し、前回紹介したミドルウェアとして実装することになりました。これがエラーミドルウェアです。エラーミドルウェアとしてエラーハンドラを実装することで、より柔軟なエラーハンドラ設定を行えるようになった一方で、エラーハンドラを有効化するコードを別に記述しなければならなくなりました。これが、今回のエラー表示の違いの種明かしです。

エラーミドルウェアの設定

 では、実際にエラーミドルウェアを設定していきましょう。といっても、実に簡単です。index.phpの$appをcreate()しているコードと、setBasePath()を実行しているコードの間にリスト1の(1)と(2)の2行を追記してください。

[リスト1]firstslim/src/public/index.php
〜省略〜
$app = AppFactory::create();

$app->addRoutingMiddleware();  // (1)
$errorMiddleware = $app->addErrorMiddleware(true, true, true);  // (2)

$app->setBasePath("/firstslim/src/public");
〜省略〜

 Slimのエラーミドルウェアクラスというのは、\Slim\Middleware\ErrorMiddlewareです。また、エラーハンドラというこのミドルウェアの特性を考えたら、特定のルーティングではなく、アプリケーション全体へ登録するものです。となると、前回の最後に紹介したアプリケーション全体にミドルウェアを登録する方法が該当し、Appインスタンスである$appのadd()メソッドを使ってミドルウェアを登録する以下のコードを、index.phpに記述するのが本来の姿と言えます。

$app->add(new ErrorMiddleware(…));

 しかし、エラーミドルウェアの登録は、常に行う処理なので、Appクラスに専用のメソッドの形で用意されています。それが(2)で実行しているaddErrorMiddleware()メソッドです。このメソッドの戻り値は、ErrorMiddlewareインスタンスそのものです。それを、(2)では変数$errorMiddlewareとして受け取っています。$errorMiddlewareは、のちに利用します。

 このメソッドの引数は、以下の3つで全てbool型なので、true/falseで指定します。

  1. $displayErrorDetails:trueならば、エラーの詳細をエラー画面に表示します。
  2. $logErrors:trueならば、サーバ内のログにエラー詳細を出力します。
  3. $logErrorDetails:trueならば、発生した例外が投げ直しの場合、元となる例外内容もログとして出力します。

 1の$displayErrorDetailsについて少し補足すると、前節で紹介した図2と図3の違いは、実はこの引数のtrue/falseの切り替えで起こります。trueの場合が図2であり、falseの場合が図3です。この引数の値は、開発環境と本運用環境でエラー表示を切り替えるのに便利です。

ルーティングもミドルウェアとなったバージョン4

 このように、Appインスタンスに対してエラーミドルウェアを適切な引数でもって登録すること、つまりリスト1の(2)の1行の記述で、エラーハンドラが有効になります。

 では、リスト1の(1)は、どのような処理なのでしょうか。これは、addRoutingMiddleware()というメソッド名から想像できるように、ルーティングミドルウェアを登録している処理です。

 実は、ここもSlimのバージョン4で大きく変わったところで、Slimはルーティング処理そのものもミドルウェアとして実装されています。そうすることで、ルーティング処理が実行されるタイミングを自由に決められるようになりました。ただ、その自由と引き換えに、エラーミドルウェアのような他のミドルウェアと組み合わせる場合は、その順番を考えなければならなくなりました。

 エラー処理は、全ての処理の最後で行わないといけません。なので、エラーミドルウェアの登録よりも前にルーティングミドルウェアを登録しておく必要があるのです。(1)で先にルーティングミドルウェアを登録しているのはそういった意味があります。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook<個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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